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『第三者委員会(2)』
令和7年2月、北海道や本州の日本海側では例年にない大雪が降り、地域住民は雪下ろしや雪かきに追われています。
さて、前回ご紹介したとおり、著名芸能人の不祥事を発端として、フジテレビにおいて第三者委員会が設置されることになりました。しかも、この第三者委員会とは、日本弁護士連合会(日弁連)の策定したガイドラインに基づく組織とのことです。既に、同社では、3名の弁護士を委員として任命し、従業員へのアンケート調査を行っていると報道されています。
一般に、不祥事が発生した企業等において第三者委員会を組成する場合、日弁連ガイドラインに基づく組織とそうではない組織があります。第三者委員会とは当該企業等が任意に設立する組織ですから、監督官庁、証券取引所、支配株主等からの指示・要請でもない限り、日弁連ガイドラインに基づいて第三者委員会を組成する義務はありません。
もっとも、日弁連ガイドラインに基づく委員会の方が、そうでない委員会よりも、身内に厳しく調査し結果を広く公表する、という見方が一部にはあります。不祥事を追及するメディアが日弁連ガイドラインに基づく第三者委員会の設置を求めるのはそのためです。ところがいつもは追及する側のフジテレビが、自らの不祥事に際して日弁連ガイドラインに基づく第三者委員会を回避しようとしたことから、他のメディアから猛烈な批判を浴びることになったのです。
日弁連ガイドラインとは、日弁連の委員会内の少人数チームによって策定され、平成22年7月に日弁連理事会で承認・公表されたものです。あくまでガイドラインであり強制力はありません。
日弁連ガイドラインは基本原則として「第三者委員会とは…企業等において…不祥事が発生した場合…において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会である」と規定しています。
企業等が設置する内部調査委員会や日弁連ガイドラインに基づかない第三者委員会では、当該企業等の顧問弁護士や担当役員が委員に就任することも多いのです。しかし、日弁連ガイドラインでは委員は企業等から独立した委員「のみ」で構成されるとされていて、この点について、日弁連ガイドラインは「企業等と利害関係を有する者は委員に就任することができない」、「顧問弁護士は『利害関係を有する者』に該当する」と説明しているのです。
しかし、通常、不祥事を抱えた企業等が最初に相談するのは当該企業の顧問弁護士です。相談を受けた顧問弁護士は自ら不祥事に対応したり、委員会を組成したりします。ところが、日弁連ガイドラインでは、顧問弁護士は排除されるので、顧問弁護士としては、不祥事にどこまで対応するべきなのか、いつどのように第三者委員会にバトンタッチするべきなのか、難しい判断を強いられます。日弁連ガイドラインが敬遠されるひとつの理由といわれています。以上
(2025.03)
