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『第三者委員会(3)』
東京の3月は中旬に雪が降りましたが、下旬から温暖な気候が続き、桜の開花が早まりました。私の法律事務所の花見は4月上旬を予定しているので、花が持つかどうか心配です。
さて、これまでご説明してきたとおり、現在、フジテレビでは、日本弁護士連合会(日弁連)ガイドラインに基づく第三者委員会が組織され活動しています。
日弁連ガイドラインは、その基本原則において「第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会である」と規定しています。
日弁連ガイドラインには「ステークホルダー」という言葉がしばしば出てきますが、その範囲は「ケース・バイ・ケースで判断される」と説明されていているだけで、明確な定義はありません。
もっとも、その前文である「『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』の策定にあたって」というタイトルの文章に、企業等の活動の適正化に対する社会的要請が高まるにつれて、この種の調査では「株主、投資家、消費者、取引先、従業員、債権者、地域住民など」といったすべてのステークホルダーや、これらを代弁するメディア等に対する説明責任を果たすことは困難になりつつある、という解説があるので、そこに記載されている利害関係者がここでいうステークホルダーであり、また、その代弁者であるメディアも説明責任を果たすべき対象に含まれていると理解できます。
また、この前文では、経営者等自身のためではなく、すべてのステークホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする、とか、真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステークホルダーである、などと記載されています。つまり、経営者はステークホルダーから排除されることになるのです。
要するに、日弁連ガイドラインに基づく第三者委員会とは、業務を依頼する経営者ではなく、それ以外の利害関係者やメディアに対する説明責任を果たすため組織なのです。そのため、経営者としては、この手の第三者委員会の組成を回避したくなるし、メディアとしては、組成を求めたくなるという図式になります。フジテレビの事案では、メディア自身が第三者委員会を組成する場合の経営者の覚悟が問われたといえます。
さらに付言しますと、ここでのステークホルダーとは多種多様で、相互に利害関係が対立する場合もあります。したがって、第三者委員会は、個々のステークホルダーの指示や意向を超えて活動することになり、せいぜいマスコミ受けを意識しつつ報告書を取り纏めることになります。要するに、日弁連ガイドラインに基づく第三者委員会とは、名目上も実質上も個別具体的な依頼者の指示や意向から切り離されて、独立して業務を行うことができる組織ということになります。以上
(2025.04)
