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『第三者委員会(4)』
東京の4月は暖かい日と寒い日が交互に続き、桜の花も長持ちしました。
さて、フジテレビ(以下「F社」)の第三者委員会(以下「第三者委」)は3月末に調査報告書を公表しました(調査報告書には公表版と実名版があり、実名版は非公表です。)。
調査報告書の内容は既に報道されていますが、概ね、①芸能人(以下「N氏」)のF社元アナウンサー(以下「女性A」)に対する性暴力、②性暴力とF社の業務との関連性、③F社社員による女性Aに対する二次加害等が認定されました。
急遽集められた第三者委ですが、わずか2か月の間に大変詳細に事実を調査し認定を行っています。とはいえ、N氏はF社の社員ではなく取引先に過ぎないこと、N氏が守秘義務を解除しなかったこと等、第三者委の調査と認定には様々な限界があったようです。そこで今回は、第三者委による事実調査の方法について御説明したいと思います。
日弁連ガイドラインは、第三者委の事実調査の方法として、①関係者に対するヒアリング、②書証の検証、③証拠保全、④統制環境等の調査(コンプライアンス体制や意識に関するアンケートなど)、⑤自主申告者に対する措置(協力者に対する懲戒処分の減免など)、⑥第三者委専用のホットラインの設置及び⑦デジタル調査等を挙げています。
調査報告書には第三者委がN氏や女性Aを含む関係者合計222名にヒアリングを実施したことが明記されています。記者会見において第三者委の竹内委員長は、N氏に対して数時間にわたるヒアリングを実施したことを明らかにしましたが、ヒアリングの回数については公表を控えました。
また、調査報告書にはF社の役職員に対するアンケート調査を2回実施したことも記載されています。一部のみ回答を含めると約88%という高い回答率だったようですが、驚いたことに、約4割もの役職員が社内でハラスメント被害に遭ったことがあると回答しています。しかも、その大半がいわゆる泣き寝入りで済まされている、相談窓口は信頼されていない、被害が相談された場合のF社の対応も不十分、被害者の救済措置が機能していない等の状況が推認されると報告されていました。
これらに加えて、調査報告書では第三者委が「デジタルフォレンジック」(削除されたメールの復元等)を行ったことが明らかにされました。当事者や関係者の間ではメール等の電子媒体の利用が増えていることから、第三者委の実務ではデジタル調査の重要性が指摘されています。特に近年はAIを使用することで、削除されたメールの中から必要な情報を復元することが可能となりました。今回の調査でもN氏とF社社員間のメールのやり取りが明らかとなり、二次被害の認定に繋がっています。以上
(2025.05)
