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『非常勤裁判官全国連絡会議』
今年は、寒くなるにつれて熊が市街地に多数出没したため、多くの人が怪我をしたり命を失ったりしています。環境省は鳥獣保護管理法を改正し、自治体の判断で、市街地でも猟銃の発砲が許されることになりました。地元の警察や自衛隊まで参加して、多くの熊が駆除される事態となっています。
しかし、そもそも人と熊が殺し合うようになったのは、従前の熊を含む野生動物に対する保護管理が不十分だったからだと思います。山林で未曽有の餌不足が生じていたのにこれを放置した結果、飢餓状態の熊が大挙して市街地に降りてきたのです。人と熊の共生を目指す新たな保護管理体制が求められます。
さて、今回は、11月に日本弁護士連合会(日弁連)で開催された非常勤裁判官全国連絡会議をご紹介致します。
非常勤裁判官とは、地裁や簡裁の民事調停事件を扱う民事調停官と、家裁の家事調停事件を扱う家事調停官の総称です。日常は弁護士業務に従事しつつ、週に1回、裁判所で民事又は家事の調停官の仕事を担当する方々です。
最高裁と日弁連は、2002年に「弁護士から常勤裁判官への任官(いわゆる弁護士任官)を促進するための環境を整備するとともに、併せて調停手続をより一層充実・活性化することを目的」として非常勤裁判官制度の創設に合意しました。以来順次拡充され、2023年までに、全国で16の地家簡裁及び支部において合計120名の調停官が活躍してきました。
特に近年の家事調停事件の複雑困難化や共同親権制の導入等を踏まえ、2024年10月以降は家事調停官が増員され、2025年10月時点で、新規導入は12家裁、調停官は合計134名にまで増員されています。
日弁連では毎年11月頃に非常勤裁判官全国連絡会議を開催し、多数の調停官に相互交流してもらい、他庁における執務を参考にする機会を設けています。今回の会議でも、民事グループと家事グループに分かれて、調停官同士の意見交換が行われました。
私が傍聴した家事グループでは、家事事件が年々複雑困難化・長期化している状況が紹介されました。
その原因として、インターネット等で知識を身に着けた当事者の一部が自説に固執する場面が増えたこと、家事事件における代理人選任率が上がった結果、双方の主張の対立がより先鋭化してきたこと、法改正が予定されている離婚後の子どもの親権や面会交流について、当事者の主張がかみ合わないことなどが挙げられていました。
ところで、調停官は、日常、地元で弁護士業務に従事していることから、利益相反(例えば、弁護士として、どちらかの当事者から相談を受けていたり、同じ法律事務所の他の弁護士がどちらかの当事者から相談を受けていたりすることなど)が生じやすいという問題があるようです。
また、実施庁の地元では調停官の希望者が現れず、隣接する県や市町村の弁護士から調停官が選任されるケースもあるようです。その一部では毎週の遠距離通勤が大変との声も上がっていました。以上
(2025.12)
